アメリカにおいて大きな成功を収めているiTunes Music Storeは実際に音楽小売業で2007年度第1位に輝いた。大きな支持を集めているiTunes Music Store、そしてそれに追随する有料音楽配信サービスであるが、一方で日本国内に目を向けてみると、有料音楽配信事業は定着していると言い難い状況である。いまだ有料音楽配信事業が占める年間の売上は全体の16%程度(2007年度)。さらにその16%のうちの90%が携帯電話向け音楽配信という有様だ。ファイル交換ソフトが流行し、デジタル化された音楽の便利さに日米両国の人々が魅せられたのが、2000年あたり。その流れをくんで両国において有料音楽配信事業がスタートしたのが2003年あたりだ。ここまではともに同じような歴史を歩んできた両国であったが、なぜ2008年現在、有料音楽配信事業の利用にここまで差がついてしまったのだろうか。
以前からこの疑問にはいくつかの答えが示されてきた。それは「日本人はCDという実態があるものを買うのが好きだから」「日本ではアメリカに比べてレンタルCDというサービスが人気だから」といったものである。中でも本論文では「そもそも日米間で、有料音楽配信サービスの質に差があるのではないか」という理由にスポットを当て、それを「アメリカにおける配信サービスの質」と「日本における配信サービスの質」を比較していく中で明らかにする。
実際に設定した指標は「ネット環境」「配信サイト数」「カタログ数」「価格」「支払い方法」「利便性」の6つである。そのうちアメリカに優位性が見られたのは「価格」「カタログ数」「利便性」であった。しかしこれが決定的な「日本で定着していない理由」であると断言できるだけの確証を得ることができなかった。
(増川洋平)