本論文は、マスメディアが政策決定に対して影響を与えるというCNN効果について検証するものである。現在までの研究において紛争などの報道が政府の政策決定に影響を与えることは実証されている。本論文では、紛争以外の自然災害の場合にもCNN効果が発生するのかをロビンソンの「政策―メディア相互行為モデル」を利用して検証する。
まず、序章では日本ではほとんど先行研究がないCNN効果に関する研究をなぜ行うのか、そしてその結果としてどのようなことが達成されるのかについて自分の経験、マスメディアに対する要望などを織り交ぜながら書いている。第一章では、CNN効果に関する具体的な説明、歴史的な変遷、CNN効果を検証するための理論モデル「政策―メディア相互行為モデル」に関する説明を述べた。CNN効果がいつの時代からあらわれ、どのような要因があったのかをホーキンス、ブーアスティンの研究を元に論じた。第二章では、実際の新聞記事を用いて実証分析を行っている。ここでは、災害に関するCNN効果に関する分析を行い、対象は2004年に発生したスマトラ島沖の大地震とした。新聞各社がスマトラ沖の地震に際して、どのような写真を用いて報道し、どのような見出しを用いたのかを量的、定性的な二つの手法を用いて分析した。その結果から災害時に日本でもCNN効果が起きたのかどうかも考察している。第三章では、CNN効果をめぐる議論について述べている。報道機関が意図的にCNN効果を発生させようとした場合の問題点や情報発達社会におけるCNN効果などに関しての考察である。現在では、日々情報に関する技術が発達しツイッター、ミクシィなどのSNSなどが生まれている。そのような技術の発達によってCNN効果は影響を受けるのかということまで言及した。最後に、論文の全体を振り返り適切な報道とは何か、報道の原則とは何かという重要な問題に取り組んだ。