日本における政治家ホームページの現状と可能性

社会におけるIT、特にインターネットの役割は拡大し続けている。

そしてそれは政治活動においても同様である。政治活動におけるインターネットの主な利用方法としては、ダイレクトメールやメールマガジン、そしてホームページが挙げられる。

これらは、低いコストで政治活動の幅を広げることができる、市民の選挙過程への積極的な参加を促すことができるといった点で、重大な役割を果たしていくことが期待されている。

しかしその一方で課題も多い。有権者のデジタルデバイドへの対応をどうするか、候補者自身のデジタルデバイドや資源差が戦略の充実度に影響するかもしれない、インターネットは同じ関心を持つ人を集めやすく、無関心層の取り込みや異なった意見の交換には直結しないといった点である。

政治活動におけるインターネット利用と向き合っていくためには、現状を把握した上で、課題についての対策を考えなければならない。そこで本稿では、様々にある政治活動におけるインターネット利用の中で、「政治家たちが政治活動の一環としてつくる個人ホームページ」を「政治家ホームページ」と定義し、日本における政治家ホームページの利用状況に焦点を当て、現状について調査を行った。

政治家ホームページは、アメリカでは盛んに選挙戦で戦略的に利用されている。しかし、日本においては、近年その開設率は増加し続けているものの、2007年1月現在の日本の公職選挙法では選挙運動におけるインターネットの利用が許されていないため、政治家ホームページの戦略的な利用についてはまだ発展途上である。

インターネットと政治の関係については、「平準化仮説」と「通常化仮説」という二つの仮説が存在する。「平準化仮説」とは、「大政党よりも中小政党、あるいは現職候補よりも新人候補の方が、積極的にインターネットを活用する傾向がある」というものである。インターネットは比較的低いコストで大量の情報を発信できることから、資金や人員の面で劣勢にある政治家にとって、より魅力的であるというのがその理由である。「通常化仮説」とは、「現実の政治の様態がインターネット空間上にも反映されている」とするものである。技術的な進歩によって、効果的なホームページを継続的に運営していくためには、高度な技術を持った専属のスタッフを雇うなどすることが必要になってきている。そのため、より確固たる財政基盤を持っている大政党や現職の政治家にとって、より有利になるというのが理由である。

これら二点について検証し、日本の政治家ホームページの利用の現状を探るため、日本の政治家ホームページの開設率と内容充実度を、所属政党と当選回数の二つの要因で比較、検討した。

先行研究によると、日本の国会議員の政治家ホームページの利用については、近年、通常化の傾向が見られるようになってきている。そして今回、日本の地方議会議員の政治家ホームページの利用状況について探るために、青森県議会議員と神奈川県議会議員の政治家ホームページ利用について調査した結果、平準化の傾向が見られた。

つまり、政治活動におけるインターネット利用は、国会議員においては現実世界の力の差を補強するが、地方議会議員においては現実世界の力の差を埋める働きをしているということである。

しかし、この地方議会議員における平準化については注意点がある。地方議会議員は国会議員よりも政治活動における政治家ホームページの利用を重視していない可能性があるのである。青森県議会議員と神奈川県議会議員ではホームページの開設率が大きく異なっていたにもかかわらず、内容の充実度に全く差が見られなかった。また、内容を項目別に見てみると今まで紙の媒体で配っていたものをただ電子化しただけというホームページが数多くあった。これらのことは、政治家たちがホームページの内容を競い合う切迫性がないと見なしている可能性を示唆している。そのため、政治家ホームページに掛けるお金に差ができず、平準化に繋がっていると考えられる。つまり、政治活動における政治家ホームページの利用がもっと重視されるようになれば、状況は平準化から変わる可能性があるということである。

日本でも早ければ2007年中に選挙運動においてインターネットが使えるようになる可能性がある。それに伴い、政治家ホームページへの取り組みにも今後大きな変化があるかもしれない。また、国会議員の政治家ホームページ利用については既に通常化が進んでいるという分析結果がある。今後も利用状況を分析しつつ、通常化への対策を含めた法整備を速やかに行い、政治家ホームページを民主化のための良いツールとなるようにしなければならない。