分析を通じて発見した、1行AAと中・大型AAの用途の違いをまとめると、1行AAは、喜びや、悔しさ、あざけりなど、根本的な人間の感情を表す顔文字として使われることが多く、どういう状況でも使いやすいため、2ちゃんねる利用者の中での共通の認識として定着していると言える。
中・大型AAは、用途に3つのパターンがあった。1,「文脈に関係なく張られるもの」 2,「AAを使ってスレッドの内容を面白く扱ったもの(ネタにしたもの)」 3,「AA自体を見てもらおうとするもの」の内、1と3に関しては、自分にかまってほしい、自己主張したいという意味合い。
今回調査中で見られた、相手の発言の形式と同じ形式でレスを返す割合が多いという数字は、相手に同調し、流れに逆らわないでおこうという考えの現れだとも取れる。1行AAを用いたレスの場合、それが特に顕著に表れていたのだが、中・大型AAの場合、相手と同じ形式でレスを返すパターンは2の、「AAを使ってスレッドの内容を面白く扱ったもの(ネタにしたもの)」場合のやり取りのみで見られた。それが調査中の数字にも影響しているのだが、基本的には1,3の用法においては、中・大型AAは自己主張の手段として使われていると言ってもいいだろう。そのため、特に3の場合に関してはAAを作り出すことが目的であり、新しいAAのバリエーションを増やしていくことが大切になる。
また、2の場合、AAを使用し、スレッドの内容をネタにするためには、そのAAの元ネタがスレッド内のメンバーに共有されていなければいけなくなる。あまり古いAAでは新鮮味がなくなるし、特定のゲームやアニメのキャラクターのAAでは、特定の板でしか知られていなかったり興味を持ってもらえない。そのため、卒論AA出現率の表のような、分布の偏りが見られるのだ。そのため、中・大型AAで、いくつものスレッドにわたって登場する同一AAはほとんど見られなかったが、AAの一部にモナーという同一キャラクターを用いたものは4つのスレッドで合計5つ確認することができた。これは、モナーが2ちゃんねる利用者の中で広く認識され、AAを作る上でモナーのキャラクターがスレッドを超えても共有されているため、中・大型AAの中での顔文字的存在として重宝されているからではないかと考える。
今回の調査で一口にAAといっても様々な使われ方のパターンがあることが分かった。2ちゃんねるという場でAAがこれほど発展し、増殖していることは、ネットでのコミュニケーションの形を知る上で大変有意義である。商標を第3者に登録申請されるなどの問題を抱えているが、基本的に著作権がないため、2ちゃんねる利用者が自由にAAのキャラクターを使ったグッズを制作・販売するという、ネットの世界を飛び出しての動きも見せている。これからもAA にまつわる動きから目が離せない。