2004年初めから急速な勢いで利用者を増やしているソーシャルネットワーキングサービス。既存のインターネット上のコミュニティとどのような点で違っていて、どのような共通点があり、そのネットワークはどのようなものであるのかを考察する。
既存のインターネット上のコミュニティ
インターネットは現在、人々の生活に深く浸透し始めている。それに伴い、インターネットなどコンピュータを通してコミュニケーションをとることが非常に身近になった。通常の対面コミュニケーションと違い、時間や場所の制約から解放された。また、主に文字のみでのコミュニケーションとなるため、非言語的手がかりが非常に少なくなる。そのため、コンピュータを介したコミュニケーションでは、社会的制約からの解放、また自己開示がより高いレベルでなされる傾向が見られる。しかし、インターネットと言う場所は利点ばかりではなく、その匿名性の高さ、オープン性から、個人情報を扱う点では非常にリスクの高い場所だと言える。
その中で、「知り合い」をベースにするソーシャルネットワーキングサービスは非常に珍しいものだと言えよう。さらに「会員登録」をしなければそのコミュニティ内には入れないという一般的なインターネットコミュニティに比べて閉鎖的な空間である。これらは、インターネット上のコミュニティにより信頼性を求める利用者たちには非常に魅力的なものなのではないだろうか。「互いに知っている」という安心感がソーシャルネットワーキングサービスを利用することに対してポジティブなイメージを与えている。
ケータイを通じて繋がる人々
インターネットの普及と共に、携帯電話の普及も非常に目を見張るものがある。携帯電話の普及は人々のコミュニケーションにどのような影響を与えたのか。
携帯電話はその特性から、コミュニケーションの直接化、常態化を生み出した。携帯電話は非常に身体化されたメディアだと言えるので、利用者たちは互いに直接繋がっているという感覚を与える。また、携帯メール機能によって、相手の都合を気にせずにメッセージを送る事が可能となり、コンサマトリーな内容のメールを頻繁にやりとりすることによって、常に相手と繋がっているという感覚を得る事が出来る。
このように、携帯電話の普及は人々のコミュニケーション、特に若者のコミュニケーションに大きな影響を与えたと言える。そしてこれは、ソーシャルネットワーキングサービスの利用にも同じことが言える。
ソーシャルネットワーキングサービスは、友達とリンクをすることで、自分が誰と繋がっているのかをはっきりと示してくれる。リンクで繋がっている友達とは、常に繋がっているという感覚を生み出し、また、リンクで繋がってさえいれば、ソーシャルネットワーキングサービスに実装されているメール機能などで常に連絡をとることが可能である。
携帯電話を通じて常に繋がっている関係に慣れている人々にとって、ソーシャルネットワーキングサービスは魅力あるものである。ソーシャルネットワーキングサービスの利用者の年齢層は20代が中心であることも、携帯電話で繋がることと共通する部分があるからだと考える。
スモールワールドネットワーク
ソーシャルネットワーキングサービス内にはスモールワールドネットワークと呼ばれるネットワークを見ることが出来る。スモールワールドネットワークとは、友人の繋がりを介していけば、どんなに遠くの人であっても数ステップで辿り着く事の出来るネットワークのことを言う。これは、普通の社会においても見られるネットワークであり、インターネットを用いる事でより大きな広がりを見せる。
ソーシャルネットワーキングサービスを定義する際に、「友人とリンクする機能があること」がまず挙げられる。ソーシャルネットワーキングサービス内では、友人とリンクする事で、友人の友人とのパスが出来上がる。これを繰り返していくと、ソーシャルネットワーキングサービスであれば、数ステップを介せば、ソーシャルネットワーキングサービス内の誰とでも繋がる事の出来るネットワークが形成されている。このネットワークが、利用者を急速に増やした要因だと考えられる。ソーシャルネットワーキングサービスはネットワークを可視化する作用があるため、普段は意識する事のないスモールワールドネットワークを実感することの出来るメディアである。
まとめ
ソーシャルネットワーキングサービスは既存のインターネット上のコミュニティではマイナス面であった匿名性の高さとオープン性に対して、知人をベースにしている事、会員登録というゲートを設けた事により、コミュニティに対する信頼性を高めた。また、「リンク」という機能によって、携帯電話でのコミュニケーションと類似した感覚を生み出している。そしてそのネットワークは、広くて狭い、スモールワールドネットワークと呼ばれる形を作っている。ソーシャルネットワーキングサービスは「繋がる」という事に対して非常に重点をおいたコミュニティであり、コンピュータを介したコミュニケーションに慣れ、友人と常に繋がっていたいと思う現代の人々のニーズを上手く掴んだサービスである。注目度も高く、これからもさらなる発展を見せるであろう。