本論文は、現代における印象広告の特徴について新聞広告を用いて調査・分析を行い、その背景について考察したものである。第1章の序章に始まり、第2章では、広告について理解することを目的に広告の定義づけ、分類、機能の解説を行う。次に新聞広告について小史を振り返り、その特性を俯瞰する。さらに、表現内容別の分類から印象広告と説得広告に着目し、印象広告は商品やブランド、企業のイメージを消費者の感性や社会的・心理的因子に働きかけ、印象的に植えつける広告、説得広告は人々の理性に訴えて理論的に問いかけ、商品の内容を説明する広告であると理解した。
第3章では、この印象広告と説得広告に関して「現代の広告の特徴として、広告の最大の役割が人々を説得することよりも、人々に商品やそのイメージを告知すること、さらには、より印象的に認知させることに変化しているのではないか」という仮説を立て、検証していく。分析については、新聞に一面で掲載されている商品広告、企業広告を業種・商品を問わず、1985年から2005年まで5年刻みで10月1日から7日まで集計した。広告上に記載されている情報を項目によって基本情報・説得的情報・印象的情報に分類し、広告の50%以上を占める項目によって、説得広告を3段階に、印象広告を2段階に分けて判定。その結果を年代毎にまとめた。
第4章では、その分析結果として現代の印象広告について、①印象度の高い印象広告が増加していること、②業界を問わず、幅広く利用されていること、③ある程度知名度のある企業の企業広告に用いられやすいこと、④新商品には利用し難いということ、⑤新聞広告上では、高額商品には用いられにくいこと、⑥商品自体にイメージを付与する必要がないものには適さないことを認めた。そしてこれらの背景として、消費者を取り巻く環境が広告にあふれており、広告には自ら消費者の注意を引きつけることが期待されること、ほとんどの商品が標準化・規格化されて商品自体に大きな差がなくなってしまったため、企業や商品のイメージ伝達の重要性が高まっていること、消費者の求めるニーズの質が高くなっていることを挙げて考察する。細かい商品自体の広告については商品特性によって印象/説得の使い分けがなされており、それと同時進行で販売元の企業自体のイメージアップに印象広告が多く利用されているとわかった。そして最後に、今回の調査・分析から、今後の印象広告の姿として、量自体の増加は限界があるが、印象度の高い広告がより増加すること、短時間で消費者に簡潔にイメージを伝達することのできる印象広告のメリットを活かし、業界を問わず企業広告における印象広告の利用が増加すること、消費者のニーズに高いレベルで応えられる商品の広告として有効であることが考えられ、印象広告が広告活動、商業活動に大きな貢献を果たすことが期待される。