働く女性の変遷記~雑誌『日経WOMAN』の表紙分析から~

男女雇用機会均等法が施行された1986年から二十数年が経つ現在、働く女性を取り巻く環境は目まぐるしく変化している。女性は家庭に入るのが当然だった時代から、職場の花としてもてはやされた時代、そして、男性と平等に扱われるようになる現代まで、女性は多くの困難とぶつかりながらも、ようやく職場での地位を得つつあると言えるだろう。本論文では、そのような「働く女性」をターゲットとし、現在まで21年間休むことなく発行されてきた女性向け月刊誌『日経WOMAN』に着目し、その表紙を分析することで、働く女性が求める情報、彼女たちを取り巻く環境の変化、そこから読み取れる今後の働く女性の在り方を考察した。

まずは、過去21年間の『日経WOMAN』の表紙分析をもとに、そこから見られる変化を挙げた。(1)働く女性に対する呼称の変化、(2)表紙タレントの変化、(3)記事ジャンルの変化、の3点に着目することで、表紙上の変化を明らかにし、結果的に働く女性がどのように変わってきたかを考察している。『日経WOMAN』創刊から現在までの21年間を3つの時期に分け、それぞれの時期における特徴をまとめると、その変化は歴然である。

まず、創刊時の1988年から1994年の「バリキャリ期」は、均等法施行直後で、男性と肩を並べて働くことが目指された。記事の比重は主に「仕事・職場」または「財テク」におかれていた。外国人キャリアウーマンに憧れ、管理職を目指してバリバリ働き、ある程度の年齢で結婚退職する像が理想とされていたことがわかる。

次に訪れる1995年から2002年の「OL全盛期」では、OLたちがPC関連のスキルや英語、習い事などに関心を広げ始める。『日経WOMAN』の記事も、そうした「資格」や「レジャー」のジャンルが増加していく。また、晩婚化が問題となり始め、結婚しない生き方にも焦点が当てられている。バブル崩壊でリストラが厳しくなる中、どうにかして会社で生き残っていこうとするOLたちの姿がうかがえる。

最後に2003年から現在までの「ワーク・ライフ・バランス期」では、少子化対策の一環である政府の政策に伴い、仕事と生活の調和が重視されるようになる。働く女性の増加に伴い、その働き方も多様化している。誌面上では、そうした様々な働き方を紹介する記事や、誰もがどんな時にでも使えるコミュニケーションスキルや日々の習慣を指南する記事が増加する。仕事か生活か、どちらか一方ではなく、両方のバランスを取って長く働き続けることこそが理想とされてきていることがわかる。こうした変化は女性側だけのものではない。ワーク・ライフ・バランスを目指すべきなのは当然男性も同じであり、今後は男女双方、また、政府や企業を含めた、社会全体での努力が求められている。

均等法の制定から二十数年、日本人の働き方は確実に変化している。その変化は今後も止まることはないだろう。『日経WOMAN』の表紙は、働く女性たちの求める情報を映し出すとともに、女性たちに新たな働き方を提示しながら、今後も読者を楽しませてくれるに違いない。

(佐藤怜奈)