本論文は、近年地域活性化の方法として注目を集めつつある地域SNSの実態調査の結果をまとめたものである。また、この調査および地域SNSによる地域活性化に関する先行研究に基づいて、どのような地域SNSが地域活性化に貢献しうるのかを再検討した。
「平成22年度版 情報通信白書」(総務省、2010)から、個人の実感にとどまらない、地域社会の絆の衰退、および地域コミュニティが弱体化の現状が伺える。このような地域社会(コミュニティ)の活性化は教育や政治、健康や安全面などにおいてさまざまな効果を発揮する。地域が弱体化している現状は改善する必要がある。
地域の絆・コミュニティの活性化の手段として注目を集めつつあるのが地域SNSである。地域SNSは、地域活性化と密接なかかわりがあるとされる「ソーシャルキャピタル(社会的資本)」をはぐくむ効果があり、また地域活性化の持続を支える「まちそだて」の概念に当てはまるものであるとされ、その成果が期待されている。
しかし、現在存在する地域SNSの中で実際に地域活性化に貢献していると考えられる事例は実は一握りであり、多くのサイトが開設されたまま放置されたり、またうまく活性化を図れずに閉鎖されてしまったりしている。また、運営主体や目的の組み合わせ方によって運営がうまくいくかどうかが左右されている、地域SNSは現実におけるコミュニケーションを補強するだけのものでしかないという地域SNSの実態が見えてきた。
地域SNSによる地域活性化においては2つのステップがある。1段階目が地域SNSが直接作用しうる範囲である地域の自律活動の活性化、アメニティ度の(住み甲斐)の向上に貢献することである。そして2段階目は現実に作用するしくみやきっかけがかけ合わさることによる包括的な地域活性化である。また、地域SNSには地域活性化の持続を支える「まちそだて」に対して効果があると考えられる。
したがって、地域SNSを地域活性化に活かすためには、それぞれの地域SNSが目指す段階や目的をはっきりさせたうえで、それに応じた適切な運用体制や運用方針をとることが重要である。