本論では、心の中の父親像・父娘関係がネガティブで、異性と関係を築くにあたり、問題を抱える女子大生の、複雑な内面を探ることを目的とした。
第1章では、娘にとっての父親の重要性と、父娘関係が娘の異性への接し方にどのような影響を与えるかを先行研究から明らかにした。娘にとって、父親から愛されているという確信は、自己の存在に対して肯定的な感情を持つための基盤となり、それを支えとして女子・女性は父親との関係の中で、自己を形成していく。逆に、女子・女性が父親からの愛情を十分に感じられない時、自分は価値の低いものだと思い込み、それを補償するように性非行へ向かうと考えられる。「自分に価値がある」という感覚を、根本(2007)は、「自己価値感」とよんでいる。この「自己価値感」は、たとえ人と比べて劣っていても、未熟なところがあったとしても、自分はかけがえのない価値のある存在だと思える「自信や有能感、自尊心、自己肯定感などを含み、また、それらの基盤ともなる感覚」である。本論では、この「自己価値感」という言葉を借りた。
そして、娘の持つ父親像には、純粋な父娘関係だけでなく、父親と母親の夫婦関係も重要な影響を及ぼしている。娘にとって重要な父親の存在を左右するのは、父親自身だけでなく、母親、そして夫婦関係であることが明らかになった。
第2章では、ライフストーリー研究について整理し、ライフストーリーの事例を検討するにあたり、留意すべきことを確認した。
第3章では、ライフストーリーの事例を検討し、ライフストーリー・インタビューの対象者となった3人の女子大学生に見られる共通点と、相違点を挙げた。
(福留明日香)