リア充ほど爆発するのか: ウェブ炎上事件の過熱化要因に関する考察

 2011年のインターネット上において目立ったトピックとしては、SNSやブログにおける問題性のある書き込みに端を発した「ウェブ炎上」という現象が挙げられる。このウェブ炎上は「Twitter」というSNSの普及によって増加したと考えられるが、近年では一般人ですらそのような炎上に発展する書き込みをした場合、結果的に深刻な被害を受けてしまうケースが多数発生しており、大きく問題視されている。

 本論文は、このウェブ炎上という現象が発生し過熱化していく要因に関して、「炎上原因行動を取った者(炎上主)」、「炎上主に対して過激な行動を取る者(炎上魔)」、「事件とあまり関わりのない者(第三者)」という三者の観点から考察していくものである。中でも特に「第三者」という今までの研究ではあまり焦点が当てられていなかった存在に着目をした。人間がニュースに注目するのはある種のエンターテイメント性を求める欲求があるからだとされるが、つまりこの第三者がウェブ炎上のニュースに注目を寄せる理由は好奇心によるものであり、特に社会的地位の高い人物に関する事件を欲しているとも言える。これは、事件の炎上主の社会的地位が高いほど炎上魔がより過激な行動を取るという行動原理と、「エンターテイメント性を求める」という点において似ている部分があると考えられる。

 そこで両者の心理的類似性を検証するために、「ウェブ炎上事件に対して第三者が寄せる注目度の大きさは、炎上原因行動の問題性の高さよりも炎上主の社会的地位の高さに大きく影響される」という仮説を立て、2011年に実際に起こったウェブ炎上の事例に関するインターネット上の記事を用いて、どのような要素を持った事例の注目度がより大きいのかを調査した。調査の結果、「炎上原因行動の問題性の高さ」よりも「社会的地位の大きさ」の方が、事件の「注目度の大きさ」に対してより強い影響力を持つことが分かり、仮説は一定の支持を得た。

 以上のことから第三者には、社会的地位の高い者が引き起こしたウェブ炎上事件に関するニュースを心理的に求めている部分があると言え、この周囲の環境の存在は炎上魔がより過激な行動を取るモチベーションに繋がっているとも推測できる。したがって、一見事件とは無関係と思われていた「第三者」の存在も、ウェブ炎上の過熱化に影響を与えているという結論が導ける。そのため今後は、炎上主や炎上魔の二者間だけに止まらず、第三者もウェブ炎上に深く関わっていることを強く自覚し、この現象を防止するために各個人ができることについて真摯に考えていく必要がある。