本論文のねらいは、スポーツニュースの内容分析を行い、スポーツニュースの番組内容に込められたテレビ局の商業的な意図の存在を明らかにすることである。具体的な方法としては、スポーツニュースの内容分析を行う。その中で、自局が放送権を獲得したイベントをどのように扱うかを観察することによって、スポーツニュース内の商業的な要素を見出すことを目指す。さらに、その意図が今後の視聴者、スポーツ、スポーツとテレビの関係にどのような影響を持っているかについての考察を行う。
本論文は、四つの章によって構成されている。以下に、章ごとの内容を記述する。
第一章では、本論文の中心となる内容分析に至るまでの論理の流れ、前提となる情報について扱った。一節では、近年のテレビ局を取り巻く状況について説明を行った。二節では、オリンピック、ワールドカップを中心にスポーツ放送権の高騰について触れ、さらに、メディアがスポーツに対して持つ影響力の増大について論じた。三節では先行研究(スポーツ中継の内容分析)から得られた知見を簡潔に紹介した。
第二章では、一週間分の、夜のスポーツニュースの内容分析により、スポーツニュース内での自局が放送権を持っているイベントの扱われ方の検証を行った。その結果、自局放送イベントの告知の存在、自局放送イベントの結果報道の充実、自局で放送されていないイベントの優先度の低下といったいくつかの傾向が明らかになった。
第三章では、2008年の日本シリーズ第四戦、第五戦のニュースに注目した内容分析を行う。ここでは主に、時間・告知要素・ニュース原稿に注目した分析を行った。その結果、告知、結果報道においては第二章と同様の結果が出た。さらに、日本テレビが読売ジャイアンツ目線の報道を行っている部分が見られ、経営関係がニュース内容に与える影響の存在が明らかになった。
第四章では、論文全体のまとめが行われている。まず、第二章、第三章のまとめを行った。さらに、内容分析から得られる情報を元に、スポーツとメディアの関係についての考察を行った。
第二章、第三章で行われた内容分析によって、スポーツニュース内に込められている商業的要素の存在を明らかにできた。具体的には、自局が放送を行うスポーツイベントの告知が行われていること、自局が放送を行ったスポーツイベントの結果報道が充実していること、自局と経営関係のあるチームを好意的に扱うことがスポーツニュース内容に商業的要素が影響を与えている具体例として読み取れた。以上から、スポーツニュース内容における、商業的な理由からの操作の存在を明らかにすることができた。
また、第三章までの分析結果と、スポーツ界、メディア業界の変化の動向から、いくつかの予測を行った。この第四章では、スポーツの商品化の加速、少数種目への注力による他種目の衰退、スポーツニュース内容の専門化、スポーツとメディアのパワーバランスの変化の四つが起こる可能性を挙げた。
(福中厚二)