異性からの電子メールにおける顔文字、絵文字の有無が読み手の感情に与える影響

 本研究では、電子メールにおける顔文字・絵文字の有無と異性の友人関係における親密度の高低が読み手の感情に与える影響を明らかにすることを目的とし、調査・実験を行った。具体的には、大学生125名を対象とし、携帯電話、顔文字・絵文字の使用状況などをたずねる調査を行い、また、携帯電話を用いて、「顔文字・絵文字の有無」、「親密度の高低」の2要因で操作された異性からの電子メールを提示し、読み手に生じる感情の程度のデータを収集する実験を行った。実験に使用された電子メールは「依頼・勧誘」、「質問」、「謝罪」、「雑談」の4つの話題のものであった。

 調査の結果から、女性の方が男性よりも顔文字・絵文字を高頻度で利用し、異性の顔文字・絵文字の使用に対して敏感であることが示された。また、男性・女性ともに電子メールでのコミュニケーションにおいて自己の感情を表現する際には、それが過剰になったり、不足したりしないように顔文字・絵文字の使用を意識的に選択したり、また、相手との関係によって使用の程度を変化させている実態が明らかとなった。男性・女性の顔文字・絵文字使用には差が見られ、電子メールコミュニケーションにおいて性別に基づいて形成されるステレオタイプがこういった状況から形成されているであろうことが示唆された。実験の結果からは、大まかな傾向として、「依頼・勧誘」・「雑談」の話題では、顔文字・絵文字によってポジティブな感情は喚起され、すべての話題において、ネガティブな感情の抑制と顔文字・絵文字の有無はほとんど関係が無いことが示された。また、話題によって大きな差が見られたものの、一部の条件下で行われたコミュニケーションの分析結果から、特に親密度が高い場合に顔文字が読み手の書き手への共感を高める可能性が示唆され、また、絵文字の使用が親密度の高い相手のポジティブな感情を、より喚起しやすい可能性が示唆された。