マスコミはしばしば、「ブーム(=流行現象)が起こっている」と、多種多様な人や物を取り上げる。そして、それらが実際に流行していると視聴者を錯覚させるような報道を行い、流行現象を作り上げる。
2006年に人気漫画『のだめカンタービレ』がドラマ化されたことによる影響からか、昨今クラシック音楽ブームが訪れていると言われている。しかし、ブームは本当に訪れたのだろうか。そのような小さな疑問を契機に、日本国内のクラシック音楽ブームの軌跡とその実態を探ることを本研究における目的とした。
本研究では、第一章で研究方法について述べた後、第二章、第三章において、「大相撲ブーム」(上瀬・亀山 1994)「流行の心理」(上野 1994)を要約する形で引用し、第四章で新聞記事を基に23年間のクラシック音楽の変遷と、その間に起こったクラシック音楽ブームの背景の考察を行う。
「大相撲ブーム」において、雑誌記事件数を流行の指標とし、人気の変化の推移を明らかにしたことから、本研究においては新聞記事件数をクラシック音楽の流行の指標とした。データソースとして、朝日新聞記事検索システム『聞蔵』を選択し、閲覧可能な1984年から2006年に23年間の新聞・雑誌記事におけるクラシック音楽の扱われ方を分析した。
記事を分析した結果、23年間のうちにブームと呼べる流行の波が4回起きていたことが明らかになったが、それぞれを第一次、第二次、第三次、第四次クラシック音楽ブームとし、新聞記事や雑誌記事、シンクタンク、音楽市場調査会社などのデータから、当時の社会状況や国民の心理状態を汲み取り、ブームの背景を考察した。
考察の後、ブームの成立に多くの背景が存在したことが明らかになったが、「流行の心理」や新聞記事にも記述されていたように、マスコミ、特にテレビがブームの成立に大きく貢献していたという事実が浮かび上がった。